名古屋大学付属病院におけるシステム整備の問題

中日新聞(夕刊)の一面に名古屋大学付属病院(名大病院)で電子カルテを統一するという記事を見つけました。
呆れた名大病院システムの作り方
逆読みすると、統一されていない電子カルテとは何か?その様なものがあるのか?となりますが、同院では診療科毎に異なる電子カルテシステムが導入されていて診療科間の情報交換、共有が思うようにいかない弊害があったとのこと。診療科だけではなく、検査などのコメディカル部門も同様に独自(自己完結型)のシステムを導入したいたと書かれていました。同院では34診療科に加え、検査・治療に関わるコメディカル部門が17もある大規模病院です。これら部門が自部門用にシステムを導入していたため、約100種類ものシステムが入り乱れていることから統合化を図ることになったそうです。どうしてこんなことになったのででしょうか?

まずは、病院のシステム整備方針がなく、各診療科、コメディカル部門が個別最適なシステム導入を看過してきたのが最たる問題と言えるでしょう。このことにより何が起きるのか?例えば・・・相互に連携のとれていないシステムであることを勘案すると以下のようになるはずです。
①外傷で手術をする外科患者がいた
②この患者は糖尿の治療を同院で行っていた
③患者が糖尿の同院での治療歴があることを外科スタッフに伝える
④スタッフは、内科に治療歴を問い合わせする
⑤内科は当該患者の診療録(電子カルテ)を見てその結果を伝える
このコラムの読者ならピン!とくるはず・・・そうです、③、④、⑤がシステム間の連携がないために、人手を介しているということです。
縦割りのシステムで相互に情報交換、参照ができない作りになっていれば、外科から内科へ問い合わせた結果を外科はどうやって見るのでしょう? 内科診療録(電子カルテ)をファイルに落として添付ファイルで転送するのでしょうか?名大病院のシステムの作り方では、外科の画面から内科の診療録を参照することはできないようになっているはずです。口頭での情報授受になり、齟齬が発生するのは必然です。
そもそも、その前に、その患者が言わなければ折角の糖尿に関する治療履歴が全く活かされないことになります。よくこんな状態で病院が運営し続けて来られたものだと感心します(呆れます)。スタッフの人的努力、注意力によって何とかなってきたものと思います。

しかしながらその限界もあるのか、同院では2015年以降診療科間の連絡ミス、診断画像の見落としなどで3件の死亡事例が発生しています。このコラムで取り上げた事例はその中の一つだと思います。このコラムを書いたときは、同院のシステムの仕組みを知らなかったので言及しなかったものの、今回の新聞を見ると、この事件では泌尿器科と放射線科との情報交換に疎漏があったことが容易に想像できます。

名大病院のようなシステム整備をしてきた例は医療システム導入の歴史が長い大規模病院では往々にあり得ると思います。パソコン、ネット関連のHow toは知っているものの、システムの作り方を知らないマニアックな医師がいる診療科では予算が付けば先行して導入してしまうという場合です。これが複数の診療科で行われると、相互に連携のとれない縦割りのシステムが複数出来上がってしまうことになります。病院上層部、システム取り纏め者のポリシー(ISA)のなさが問われます。費用対効果を検証せず、予算を認可し続けてきた大学当局も問題でしょう。それと同時に、名大病院のシステム整備を請け負ってきたをSIベンダの良心を疑います。本来なら、電子的に情報交換のできない独立したシステムではせっかくの情報を活かせないことを説得すべきでした。プライドの高い大学病院の医師を説得するのは気が引けるので、お金をもらって言われたことをやっていた方が軋轢を生まないし楽だ、という感覚に陥ってしまったのでしょうか?

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